FRK(不動産流通経営協会)による、ヤフーへの物件情報提供停止の本当の理由
このところ、不動産業界内でショッキングなニュースとなっている、FRKによるヤフーへの物件情報提供について、その本当の目的を考えてみようと思います。
まず、FRKとは、4つある主な不動産業界団体の一つです。
業界団体には、全宅(全国宅地建物取引業協会連合会)・全日(全日本不動産協会)・FRK(不動産流通経営協会)・全住協(全国住宅産業協会)の4つがあります。
他にも多くの団体がありますが、メインはこの4団体で、ほとんどの不動産業者は、どれかの団体に所属しています。(ちなみに当社は全日に所属しています。)
この中でもFRKは、大手の業者が多いのが特長です。テレビCMをバンバン放送している、そうそうたる会社が名を連ねています。
現在の日本の不動産流通市場を牛耳っていると言ってもいいと思います。
これまで、FRKは所属している業者が登録している物件情報を、無償でヤフーに提供してきたそうです。
これは、不動産物件情報を数多く掲載してアクセス数を稼ぎたいヤフーと、ヤフーのサイトに物件情報を掲載することで成約率を上げたいFRKの思惑が合致した結果、このようなウィンウィンの関係が築かれたのでしょう。
ではなぜ、今になってFRKは物件情報の提供を停止することになったのか?
直接のキッカケは、ヤフーがソニー不動産と資本提携したことです。これにより、情報の中立性が損なわれる、としたFRKがヤフーへの情報提供を停止することにしたそうです。
どうしてソニー不動産と資本提携すると情報の中立性が損なわれることになるのか、その理由がよく分かりません。
これは、私の推測に過ぎませんが、おそらく、FRKの本当の目的は、ソニー不動産の排除であると考えます。
ソニー不動産は、「両手取引」を止めると宣言しました。
「両手取引」とは、不動産業者が売り手と買い手の双方を仲介して、双方から手数料を取る取引のことを言います。
双方から手数料を取れるので、業者の利益もその分膨らみます。
この両手取引、以前から問題視されており、国会でもこれを禁止する法律が検討されたことがあります。
売主から売却を依頼された業者が、その情報を他の不動産業者に伝えずに抱え込んで、自社の顧客にのみ販売する、という行為が横行したからです。(している、と言ってもいいと思います。もちろん、すべての業者がしているわけではありませんが。)
ですが、両手取引そのものが悪いわけではありません。
良識ある不動産業者が、売主・買主双方の間に入って条件を調整することは、”和を以って貴しとなす”の日本的風土にも合致するもので、むしろ健全な両手取引こそ、最も効率的な取引である、ということも言えるわけです。
ですが、この両手取引を悪用して、物件情報を囲い込む業者が後を絶たないため、問題になってしまったのです。
物件情報を囲い込まれると、売主は一方的に損をしてしまいます。
この両手取引の悪用を大手を含む一部の業者がしている原因として、高コスト構造があるのだと思います。
テレビCMやチラシの出稿代、すぐ辞めてしまう社員の補充費用や教育費用などが常にのしかかってくるため、両手取引でないと収支が成り立たない、というのが実情かもしれません。(不動産流通業界は、社員の入れ替わりが本当に激しいです。)
今回の事件は、業界の既得権益を揺るがしかねないソニー不動産への攻撃、と捉えることができます。
ソニー不動産は、両手取引中止の他に、不動産の個人間売買のサポート業務も始めるらしいです。
これから業界も変わっていくのかも知れません。
ただ、我々がやることは、それぞれの不動産が持つポテンシャルを最大限に引き出し、それをもって豊かな社会を作っていくことです。
そこには、それぞれの関係者が笑顔で終われる取引がなくてはならないと思います。